是枝裕和監督が札幌のシアターキノで映画「真実」特別編集版の舞台あいさつ

是枝裕和監督が(57=写真)が15日、札幌の映画館「シアターキノ」で舞台あいさつした。今回は自身がメガホンを持った映画「真実」特別編集版が14日から同館で公開されたことを記念して行われた。会場には「世界の是枝」を一目見ようと詰めかけたファンで満席になった。グレーのセータ姿で登壇した是枝監督は「シアターキノは3年ぶりになる」と懐かしそうに客席を見渡した。

舞台あいさつする是枝監督(中央)

作品はフランスの大女優のカトリーヌ・ドヌーヴが主演し、是枝監督初の国際共同製作作品として話題になった。国内では10月11日の公開以来、大きな反響を呼んでいる。それだけに会場のファンからの質問が数多く寄せられた。子役のオーディションの様子の披露では、特技がフルートというシャルロット役のクレモンティーヌ・グルニエについて「フルートを吹いたらすごい下手で特技なのかと思った。そうしたら『今日はフルートが良くいない』『違うフルートを持ってきた』みたいな、フルートのせいにした」と笑いを誘った。続けて「それがすごく良くて。これは遺伝子的に言うとおばあちゃんの血を隔世的遺伝子を継いだという設定にすると生かせるかもしれない」と、子役決定の瞬間を明かすなど製作の裏話を紹介し会場を盛り上げていた。
また、是枝監督は舞台あいさつに先立ち取材に応じた。この日は、是枝監督は本作ヨーロッパ上映のため、あす(16日)渡仏する直前の強行軍の来札だった。

笑顔で質問に答える是枝監督

Q)渡仏前日の多忙の中、なぜシアターキノに―
A)デビュー作からお世話になっている。地方都市のアウトハウスをどのように存続させていくかは作り手にとってもお客さんにも大事なことなので、力になれればと思った。
Q)本作は10月11日公開以来2カ月が経過し、好評の中各地で上映が続いている―
A)ありがたいこと。フランスやヨーロッパの公開がクリスマスなので、日本の公開も大事だがパリの公開を成功させるのが、この作品のゴール。まだゴールに入っていないので余韻に浸っている余裕がない。
Q)好評な本作は多くの方に何を共感させたか―
A)母と娘の話はどこの国でも文化的な違いを超えて「こういうことあるよな」という部分が大きかった。女性限定とは思わないが、母と娘、親子で見終わった後に語り合うことが増えるような気がしている。日本ばかりではなく、いろいろな国で上映に立ち会って感じだ。
Q)自身初の国際共同製作作品で苦労した点は―
A)苦労したでしょうとインタビューで聞かれるが、そんなに苦労していない。苦労話を聞かせてくれと言われるとすごく困る、と言うのが苦労している。(撮影現場は)いろいろなことが非常にスムーズだった。映画を作るのはフランスで撮っても日本で撮っても常に新しい問題が起き、それに対処しなくてはいけない。
Q)日本とフランスとの撮影の違いは―
A)撮影の時間がすごく限られているとか、週休2日が厳守されていた。作っていくサイクルが違ったが、順応できてた。むしろその方がスタッフが楽なので、これを日本でもできるように製作環境を変えていけるように宿題をもらって帰ってきたようだ。
Q)次回作に生かしていくのか―
A)これは僕だけが言い出しても難しくて、業界全体の問題にしていかなければいけない。出資側をどう巻き込んで理解してもたってということを少しずつだが、やります。

ドヌーヴについて話す是枝監督

Q)現在休養中のカトリーヌ・ドヌーヴに連絡したか―
A)本人ではなく周りの方たちと連絡を取り合っている。あすパリに行ってお見舞いできる常態なのかは分からない。退院ができたのでひと安心している。
Q)ドヌーヴはどんな女優で、どんな印象を持ったか―
A)音楽のような、非常に軽やかでリズミカルで、明るくて、おもしろくて。見ていて飽きない。撮影現場に入ってきて帰るまでの間、みんなが目を離せなくなる感じ。本当の意味でのスターだと思う。帰った後、「今日のドヌーヴさぁ」とみなんに話したくなる感じ。今日こんなこと言ったんだよって。
Q)実際につぶやいた―
A)必ず日記に今日のドヌーヴ、といろいろと書いた。
Q一文披露を―
Q)映画の中でイーサン・ホークが「お休みのキスがここじゃなくて、ここなんだよなんだよ」というのは、(ドヌーブが)撮影が終わった後に「お疲れさま」とぼくにハグしてキスをする。自分が納得したときにちょっとこっち(くちびる)に寄ってきて、長くなる。これはたまらんなぁ、それをメモして台本に書いた。ちょっと自慢できる。
Q)今回の特別編集版と通常版はどちらが真実か―
Q)どっちも好き。短い方(通常版)はボクサーがぎりぎりまで体重絞って、リミット下げたシャープなもの。特別編集版は試合当日に体重を少し戻してパンチに体重が乗るくらい。僕の好みとしては長い方(特別編集版)が緩くて、どこに話がいくのか、この話はいるのかを含めて少しムダがある方が好き。
Q)次回作は―
A)この5年間で5本撮ってきて幸せな5年間だった。ここで小休止したい。来年は撮らない。どこで何をやるかはじっくり考えたい。日本の中で撮りたいものもあるし、歴史をさかのぼり戦時中のアイデアもある、海外で日本人ではないキャストとやりたい企画もある。

◆上映館 札幌シアターキノ(中央区狸小路6丁目南3条グランドビル2階)https://www.theaterkino.net/ttB.html

◆映画情報 日刊ゲンダイ北海道ホームページ「映画情報」https://hk-gendai.com/movie/